
2006年10月01日
(敬称は2006年当時)
ナショナル建材工業株式会社
(現・パナソニック電工群馬株式会社)
代表取締役社長 木下 穹制 氏
常務執行役員 遠田 治光 氏
生産技術部 部長 佐藤 誠 氏
生産技術部 主任 栗原 章 氏
生産技術部 主任 小林 康峰 氏
日本百名山に数えられる赤城山や武尊山などの山々に囲まれた、緑豊かな群馬県沼田市。ナショナル建材工業株式会社(現・パナソニック電工群馬株式会社)は、この沼田市に約17万平方メートルの広大な工場を擁する、松下電工グループ(現・パナソニック電工グループ)の木質床材のトップメーカーだ。これまでにも積極的な環境対策を行ってきた同社だが、このたび他社に先駆けて、温室効果ガス(GHG)の環境省自主参加型国内排出量取引制度にも参加、排出量の算定・検証に取り組んでいる。
GHG排出量算定・検証を実施
1950年に創立したナショナル建材工業株式会社(現・パナソニック電工群馬株式会社)が、現在の沼田市井土上町に新工場を移転したのは1966年。以来、「健康」、「性能」、そして「環境」をキーワードにした木質床材をつくり続けている。
「木質床材の原料は木材資源ですから、私たちにとって、環境対策は昔から避けることのできない大きな課題でした。木材資源の問題や、製造過程での電力の使用、廃棄物、工業用水の排出など、さまざまな環境負荷が発生する中で、こうした環境負荷をトータルで減らしていくためには、商品企画という事業の根本から環境を考えなければいけません。」と同社の代表取締役社長 木下 穹制氏は語ってくれた。
木下氏のこうした強い信念のもと、同社では、枯渇化が懸念されている南洋系広葉樹の使用量を削減するために、針葉樹の使用を促進したり、リサイクル材料やケナフなどの代替材料を使用した多様な建材の開発を行ってきた。さらに、輸入木材の原産国であるタイでは、“緑の恩返し”として、植林活動を行っており、今後、ここで育てた木材を利用することも視野に入れているという。
こうした環境経営の一貫として、同社では製造工程においても、古くからさまざまな取り組みを行っている。その一つが、木材加工の際に発生する、木屑、端材の利用である。工場内の加工工程で発生した木屑や端材を、敷地内に張り巡らされた専用の輸送管を利用してボイラーに集中的に集め、ボイラー燃料として活用する。ボイラーの蒸気を暖房やプレス機などの加工機械で利用する、循環型のエネルギーシステムを構築している。
「木屑、端材を燃料として活用すれば、重油の使用を減らすことができます。最近でこそ、バイオマス燃料用のボイラーについてよく耳にしますが、当社では、こうした取り組みを1966年から行ってきています。」と常務執行役員の遠田 治光氏は語ってくれた。
同社では、こうした木屑、端材だけではなく、原料が輸送される際に使用する梱包用の木材などもすべて社内で再利用しており、2001年には松下電工グループ(現・パナソニック電工グループ)の「ゼロエミッション工場」にも認定されている。

昨年2月に京都議定書が発効されて以来、企業での温室効果ガス(以下、GHG)削減への積極的な取り組みが求められている。こうした中、同社では他社に先駆け、国内排出量取引制度へ自主参加。環境省から支給される補助金を活用しながら、GHG削減へ向けた設備投資を行っている。
「これまで、熱余剰時にはボイラーの蒸気を大気へ放出していました。4月からは、こうした余剰蒸気を使って発電を行い、電気集塵機やエアコンプレッサーなどのエネルギーとしています。これによって、電力使用量を減らして、GHG排出量の7%削減を目指しています。」と生産技術部 部長 佐藤 誠氏は語る。 現在、同社の余剰蒸気による発電容量は100キロワット。これは、工場での消費電力の約2%に相当する出力だ。
「夏場は余剰蒸気量も増えますので、工場の電力使用量の約5~6%に相当する発電を行っています。しかし、冬場は夏とは逆に蒸気が不足することもあり、重油ボイラーを兼用しなければなりません。今後は、より効率的に余剰蒸気を活用していくことが、GHG削減のポイントとなるでしょう。」と生産技術部主任 小林 康峰氏は今後の課題をあげた。
国内排出量取引制度では、GHG排出量の算定・検証を正しく行う仕組みづくりが必要となる。これには、ISO9001、ISO14001のマネジメントシステムが役立ったという。
「GHG排出量の算定・検証には、施設管理だけではなく経理部門や外部の業者の協力も必要となります。これは、ISO14001の運用体制や仕組みを活用することで、作業自体は非常にスムーズに進めることができました。」と生産技術部 主任 栗原 章氏は胸を張る。 また、GHG排出量は第三者に検証してもらわなければならないが、LRQAが同社の検証を行っている。
「GHGの排出源としては、電力の使用のほか、LPGや重油・ガソリンなどの燃料、木屑の焼却などがあります。この中で木屑などの焼却によるCO2排出は、バイオマス生育時のCO2吸収量と相殺されます。しかし、木屑に付着した塗料や接着剤はGHGの排出源だと、審査員に指摘されました。こうした厳密な検証を行ってくれましたので、よりレベルの高いGHG削減・検証体制を構築することができたと思います。」と、栗原氏はLRQAの検証サービスを評価する。
こうして進められてきたGHG削減は、2006年度の7%削減の目標達成へ向け順調にスタートしたようだが、課題も見えてきたと、遠田氏は語る。 「4月、5月あたりまでは、7%という削減目標をクリアできましたね。しかし、夏場に入ってから増産が続いてきているため、排出量もおのずと増えてしまっています。このままの状況だと、7%の削減目標達成が厳しい見込みです。そのため、年末には、新たな取り組みを行う予定です。」
この工場は設立以来、増設を繰り返してきたため、各作業場の配置が効率的ではなくなってきている。そのため、年末を目途に工場のレイアウトを見直し、効率的な配置にすることで、フォークリフトやトラックなどの運送量を減らし、構内作業車両が排出するGHGを大きく削減していく予定だという。
最後に木下氏に今後のGHG削減への取り組みの展望を語ってもらった。 「今回のGHG対策はゴールではありません。まずは、できることからスタートしているのです。今後もGHG削減に限らず、環境負荷削減への取り組みを、さらに強化していきたいと考えています。」
環境経営の一環として、他社に先駆け積極的なGHG削減対策を行っており、その姿勢は、ビジネスの面だけでなく、社会的にも大きな評価が期待できそうだ。
従業員数が約460名のナショナル建材工業株式会社(現・パナソニック電工群馬株式会社)では、TPM(total productive maintenance)と呼ばれる作業者の自主的な生産保全活動に、以前から積極的に取り組んできている。こうした取り組みの中で、社員からは1500 件以上の改善提案があるようだ。提案された改善案は社内のコンクールで選抜され、優秀案は松下電工グループ(現・パナソニック電工グループ)全社で水平展開される例もあるという。
こうした社内の積極的な改善提案や、その改善案を受け入れる社風から、今回のGHG削減の場合も、現場を熟知した社員からさまざまな意見、指摘が出てきたそうだ。モレのない、包括的なGHG対策、省エネルギー対策の実現には、積極的な現場の協力が必要不可欠といえる。